借用書とは、金銭消費貸借契約書などとも呼ばれお金の貸し借りに関する条項を記した書面のことです。
金銭のやり取りを残しておかないと様々なリスクがありトラブルに発展するケースが非常に多い為、金銭の貸し借りがあったことを証明する意味でも書面に残しておくことは重要です。
金銭消費貸借契約書
金銭消費貸借契約書には主に以下のような条項を記載します。
貸借する金額と日付
金額は後々双方の認識がズレないように1円単位まで正確に記載します。(手書きの時代は借用書では改変されにくいという理由から旧漢数字を使うことも多かったですが、最近ではパソコンで作って印刷した書面を使うので数字(123)を使うことが多くなっています)
日付は利息や時効などの法的要因にも関わってくるので必ず記載するようにしましょう。
使用用途
必須時効な訳ではありませんが、例えば「親が病気になった」「起業の為の資金」などの理由でお金を貸してほしいと言われたにも関わらずその様な事実がなかった場合は詐欺罪に問える可能性もある為、貸したお金の使用用途を記載しておくと後々役に立つかもしれません。
返済計画
一括なのか分割なのか、その支払い期限や回数など、どういった方法でいつまでに返済するのかということを明確に残しておきます。
仮に返済計画を定めない状態でお金を貸し借りした場合、いきなり「貸したお金を今すぐ返してほしい」と要求することはできず、相応の期間を空けた期日(おおよそ1週間)を定めて催告しなければいけないとされています。
その為、返済が期日までにされなかった場合はすぐにでも全額の返済を要求することができる旨を書面に残しておくことでそういった問題を解消することができます。
利息
個人間の借金については、利息制限法が適用されます。 利息制限法では下記の利率上限が定められている為、下記を超える利息を取ることはできず、超過利息部分は無効となります。
- 元本が10万円未満の場合
- 年20%
- 元本が10万円以上100万円未満の場合
- 年18%
- 元本が100万円以上の場合
- 年15%
双方の氏名と住所
「誰が」「誰に」対して貸したのかという証明と双方が書面の内容に合意したという証明の為に本人の自筆の署名と押印を残します。
印鑑は必ずしも実印である必要はありませんが金銭のやり取りには様々なトラブルの可能性がある為、可能な限り実印か拇印などで押すようにしましょう。
強制執行認諾条項
強制執行認諾条項とは、借りた側が返済を怠った場合に財産を差し押さえすることを認める条項のことです。
財産の差し押さえの対象には給料や車、土地や建物などの不動産など様々なものが含まれます。
債務弁済承認契約書
債務弁済承認契約書とは、過去に貸し借りを終えている金銭貸借について改めて作成する書面です。
お金を貸す時は相手を信頼して借用書は作らなかったものの、相手の返済がなかったり不安になることがあったりした場合にご依頼いただくケースが多いです。
基本的に記載する内容は通常の借用書(金銭消費貸借契約書)と同じような内容にはなりますが、違う点としては金額の記載があります。
返済済み金額と残金
債務弁済承認契約書を作成する時点で一部でも返済がされている場合は、いくらの貸し借りがいつあって、その内いくらの返済がいつあったのかというところまで記載します。
書面に残すメリット
貸し借りを証明できない
お金の貸し借りを行った時に書面に残しておかないと万が一借りた側が「お金を借りた覚えがない」と主張してきた場合に法的な措置に入ることができなくなる可能性があります。
仮に借りた側に悪意がなくても本当に記憶からなくなってしまう可能性もないとは言えない為、信頼できる相手であっても書面には残すようにしましょう。
返済が遅れた時の対応ができる
金銭貸借において返済が遅れた場合は特に取り決めがない場合であっても遅延損害金の利率を3%として返済を求めることが可能ですが、借用書で定めることで遅延損害金を20%~30%を上限に設定することが可能です。
- 元本の額が10万円未満の場合
- 年29.2%
- 元本の額が10万円以上100万円未満の場合
- 年26.28%
- 元本の額が100万円以上の場合
- 年21.9%
借金返済の時効
時効は5年
2020年4月1日に法改正が行われ、お金の借り入れは以下のいずれかを満たしたときに時効が成立することとされました。
- 債権者が権利を行使できると知った日の翌日から5年経過したとき
- 権利を行使することができる日の翌日から10年経過したとき
10年の場合が適用されるのは返済に関して「○○した時」など、具体的な期日ではなく一定の条件などで設定した場合の特別な状況になる為、基本的な時効は5年が適用されます。
また、この時効に関しては5年経てば自動的に返済義務が消滅する訳ではなく、「返済の催促が5年されない場合に借りた側が時効を適用した場合」に時効が成立します。
時効成立を防ぐ方法
時効が成立する為には上記の要件が必要になる為、時効を成立させない為には
- 最後の返金要求から5年以内に返金を要求する
- 5年経過した場合でも相手が返済の意味を示した場合は時効は適用されない
を行えばよく、相手が返済してくれない場合であっても定期的に相手に対して返済要求をしていくことが重要なポイントとなります。
公正証書とは
借用書が私的な書面であることに対して、公正役場で公証人作成してもらうものが公正証書となります。
強制執行認諾付き公正証書を作成しておくことで相手が返済を怠った場合に相手の財産を差し押さえる為の過程で必要な「裁判所の判決」をもらう必要がなくなる為、差し押さえがしやすくなります。
公正証書作成の流れ
任意の公証役場に問い合わせを行い、まずは作成する書面の内容や当事者の身分証と情報を送ります。
その後、公証役場から草案がデータで送られてくるので確認後、問題がなければ当事者が揃って公証役場に行ける日時を予約します。
予約した日時に公証役場を訪問し、当事者が内容を確認後、署名押印して書面を受け取り完了となります。
料金や期間は作成する公正証書の内容にもよりますが、料金はおおよそ1万円~2万円、作成期間は2週間程をみておいてください。
個人間の貸し借りと自己破産
金銭の貸し借りにおいて認識しておかないといけないこととして「自己破産」というものがあります。
自己破産は借金などの負債が返せなくなった人間が法的な手続きをとることで返済義務がなくなる制度のことです。
自己破産するとどうなる?
自己破産すると個人間であっても借金の返済義務はなくなり、貸した側は借りた側に対して返済を要求することができなくなります。(借りた側が自分の意思で返すことは可能)
その代わりに自己破産する人間の財産は全て差し押さえされ、その財産は債権者側に借金返済分として割り振られます。
また、自己破産した人間には自己破産の記録が5~10年間残り、その間はクレジットカードを作ることもローンを組むこともできなくなります。
借用書作成について
借用書作成料金
リモート作成 | 33,000円 |
面談作成 | 44,000円 |
草案修正 | 無料 |
公正証書への引き継ぎ | +30,000円 |
借用書作成の流れ
- お問い合わせ
まずはお電話・メール・LINEなどの方法でお問い合わせください。
- ご契約・ご入金
ご依頼いただく場合は前払い制となりますので、ご入金を確認後に着手となります。
- 草案作成
まずはお聞きした内容を基に草案を作成いたします。
作成期間は数日~1週間以内が目安です。
- 草案修正
草案ができ次第データでお送りしますので内容を確認いただき、修正点があれば修正いたします。
- 書面完成
書面が完成したらそのままそのデータを印刷してお使いいただくか、こちらで印刷したものを製本して郵送してお渡しして業務完了となります。
借用書の活用事例
一般的に借用書というとお金の貸し借りを書面に残すものというイメージがありますが、厳密には金銭のやり取りを残す借用書は金銭消費貸借契約書や債務承認弁済契約書などと呼ばれ、借用書じたいには以下のような幅広い活用方法があります。
- 出版社や図書館間の貸借: 出版社や図書館は、他の機関との間で書籍や資料の貸借を行うことがあります。例えば、特定の書籍を一時的に貸し出し、その後返却する場合に借用書が使用されます。借用書には、貸出期間や貸出条件、保証金の有無などが記載され、双方の合意が証明できます。
- 研究プロジェクトでの資料共有: 大規模な研究プロジェクトでは、複数の研究者や研究グループが関与することがあります。このような場合、特定の資料やデータを他の研究者に貸し出し時に借用書を使用して、貸し出しの条件や返却期限、機密情報の取り扱いなどを明確にすることで、研究プロジェクトの円滑な進行を支援します。
- 展示会やイベントでの資料貸出: 展示会やイベントで、特定の資料やツールを他の参加者に貸し出す場合にも借用書が利用されます。例えば、展示会ブースでデモ用の機器やサンプル商品を一時的に貸し出す場合、借用書を使用して貸し出しの条件や責任範囲を明示します。
- コレクションの貸し出し: 博物館などでは、貴重な資料や展示品を他の機関や研究者に貸し出し時に借用書を使用して、貸し出しの目的や期間、保険の有無、取り扱い規定などを詳細に記録します。
- 舞台演劇や映画撮影のための小道具貸し出し: 舞台演劇や映画撮影の現場では、特定の小道具や衣装を他の劇団や制作チームに貸し出し時に借用書を使用して、貸し出し条件や返却期限、修理や損傷の責任などを取り決めます。
これらは借用書の詳細な活用事例の一部です。借用書は、貸し借りに関する条件や責任範囲を明確にし、貸し手と借り手の関係を円滑にするために使用される重要な文書です。